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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第2章 コンビニはどこですか

 驚きビビっているのはあたしだけではないらしい。
 
 驚いて発情気分を吹き飛ばしてしまったらしいラクたんも、ンゴォォォと引き攣ったような悲鳴を上げて、縋るような目をあたしに向けた。

 助けてくれと言っているらしい。


「知らんわ、お気に入りされているのはあんたの方でしょう。あんたが追っ払わねば、嫌よ嫌よもも好きなうち……解釈されるのがオチよ!? あんた得意の砂漠の中でのことなんだから、ここはオスとしてワイルドさを見せて撃退しなきゃ!! 撃退出来なきゃ去勢されちまうぞ!?」


 ラクたんは、必死に抵抗を始めたようだ。

 ぶる、ぶるる。

 身を震わすだけの、なんて女々しい抵抗。


 それに呼応するように、砂を大量に撒き散らす大きな怪物は、異質な音をたて始めた。


 ゴキュッゴキュッ。


 怪物の攻撃ターン!?

 ラクたんもさらに青ざめたようで、口を開けたまま硬直している。


 よし、なにかあったらラクダを供物に捧げて、あたしは猛ダッシュで逃げよう。そう覚悟を決め、逃走姿勢をとっていた時。


 ゴキュッゴキュッ。


 あたしは、思わず唾を飲み込んだ。


 ……怪物が奏でる音は、なんとも爽快にて。

 そう、あれです。ビールのCMに流れていそうな嚥下音そっくりなんです。


 喉が渇いていたゆえの幻だとしても、無性に……。


 …………。


 ゴキュッゴキュッ。



 …………。
 

 ……飲んでないか。

 ねぇ、あたしの水、思い切り飲んでないか?



 その事実に気づいた時既に遅く、そして怪物は……手にしていた水筒を真っ逆さまにして、体にかけたのだ。


 いやあ、こんな暑い日には気持ちいいね!

 水滴が太陽の光にきらきら反射して綺麗だね!

 砂がとれて快適だね!


 なんて思うかっ!



 あたしが飲もうとしていた命の水を……シャワー代わりにしやがった



 ぶちっ。



 あたしの中で、盛大になにかが切れる音がした。

 思わずラクたんが青ざめてあたしを見つめるほどの。


 そしてあたしは憤然と詰め寄ったんだ。

 水も滴る、美男子(イケメン)の元に。



 ……ん? 美男子?



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