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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第1章 破談になりました
 
 負けた……。

 あたしは、あの男以下だった……。


 悔しい。


 前カレには遊んでいる女と思われたから、今回は相手に合わせて地味に装っていたのが仇(あだ)になったのか。


「なんで、男……」


 女としてのプライドが傷ついた。


 あのごつい男の方が、奴のテク程度で敏感にアンアン啼くんだ……?

 ノンケだった聡の方が、積極的な攻なんだ……?


 …………。


「というか、想像したくないんだけど……」


 不快感と衝撃に脱力したあたしが、両手を裏路地の汚い地面につけて蹲った時だった。

 携帯の、メール着信を知らせる短いバイブが震えたのは。


 咄嗟に聡からだと思ったあたしは、大切なのは君だと気づいたからヨリを戻して欲しい……とか、ご都合主義な展開を考え、どう罵ってやろうかと考えながら、受信BOXを見れば――。


『おめでとうございます!』


 そんなタイトルと、


『失恋NO.999,999,999,999人目の貴方が選ばれました!

貴方の理想の結婚相手を、必ず探し出します!

満足度が100%以下なら、1億円差し上げます』


 そんな内容にブチギレた。


「なによこれ! しかもおめでとうなんてなんて失礼な迷惑メール! 出会い系!?」


 憤慨するあたしの目には、このやけに自信ありげなうたい文句が鼻につく。

 運命の伴侶と選んだあたしの見立てが間違っていて、このサイトの見立てが絶対的だの100%だの豪語しているのが、無性に気にくわない。


 見知らぬあんた達になにがわかるんだ、くそ~人ごとだと思いやがって。


 そう、あたしは自棄だったのは間違いない。

 とにかく、失恋時にタイミングよく送ってくるこのメールのサイトに、一泡吹かしてやりたかった。いわゆる……八つ当たりだ。


「ふんっ、1億円貰おうじゃないの」


 だから、迷惑メールが内包する危険性もなにも考えず、とにかく挑戦状を受けたような好戦的な気分で、あたしはメールの下にある「サイト入り口」のリンクボタンを、鼻息荒くクリックしたのだった。

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