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あたかも普通の恋愛小説
第11章 深海のそこまで
「何か俺が知らないことがあるとか思うだけで嫌」
私はクスッと笑う。
「はじめての相手はどんな奴?」
「んー……。はじめての前のひとから話していい?」
全部となると、私の最初は失恋から。あんまり楽しい話はどこにもなさそうだけど、苦い思い出も郎太が聞きたいなら別に話してもいいかな、って思う。
っていうか。そんなこと今まで聞かれたことないな。私の過去なんてどうでもいい、ううん、私のことなんてどうでもいい。きっとそんなひとばかりだったから。
高校時代の先輩を好きになって告白して失恋した話をしたら、郎太は溜め息とともに呟く。
「その頃会ってたら良かった」
のびてきた手のひらが優しく胸の膨らみを包んで、また私をおかしくしてゆく。
「はじめてのひとはこんなに気持ちよくなかった。ていうか痛くて散々で惨めだった」
「誰」
「二個下の後輩。付き合ってはいたんだけど放課後学校で無理矢理されて」
ほんとなら言いたくないような話が、どんどんと出てくる。胸を狂わす甘い刺激とやんわりとした低い声に誘われて私は自分の心の奥底に閉じ込めていたものを躊躇いなく取り出して。郎太の前に拡げた。