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あたかも普通の恋愛小説
第12章 奈落、注意報
「なんで……泣いちゃうかな」
やれやれと頭を掻いて、井藤くんは小さく息をついた。黙り込んだ私の目からは我慢しようと思いつつ次々に滴が落ちる。
「私、すごく郎太が好き。だから今とっても幸せ。でも、」
ずっと続くなんて思ってない。ずっとずっと続けばいいけど、そんな夢みたいなこと夢見てない。だから一日でも一秒でも長く、今幸せであることを噛み締めてたいの。ひとつでも多く、私を、私のいいところを郎太に認めてもらいたいし、郎太を理解したい。いい関係を続けたい。
好きだから。
好きだからこそ。
好きっていってくれるひとだから、それに胡座をかかずに大事にしたいんだ。なくしたくないんだ。
壊れないものなんかないから。壊さないように守らないと。