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あたかも普通の恋愛小説
第14章 一分一秒
郎太の吐き出す深い息が私の肩にかかる、一旦顔を伏せていた郎太が再び顔をあげると私を撫でた。
「ごめんね……俺、どうかしてた」
私の涙はついに決壊して郎太の表情は見えなくなる。だけど少しずついつもの郎太に戻ろうとしてるのがわかって私は郎太にしがみついた。
「ごめん。痛かったね」
体の痛みより心が痛かったよ。恐かったよ。だけど言葉にはならなくて私はしがみついたまま首を横に振る。郎太も、どういうわけか私が郎太を嫌って離れていくって思って、だから怒っていたの?
郎太の指が私の肌を撫でる。そこには真新しい噛みあとがあって、郎太は後悔してるのかごめんと繰り返す。
「……大好きなの、だから……郎太が、」
「うん、ごめんね……もっと信じる」
泣きじゃくる私を抱きしめて郎太は低い声で囁いた。こんな私を信じるなんてきっと男のひとには難しいんだろうな、郎太にも今でも、私がふしだらな軽い女に見えるのかな。