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あたかも普通の恋愛小説
第3章 にゃんにゃん禁止令
部屋を抜け出すと、やっと会話が出来るくらいには静かになった。とはいえあちらこちらから色んな音楽がぐちゃまぜで少し目が回る。
「大丈夫?だいぶ足に来ちゃったみたいだけど」
私の腰に手を回したまま一緒についてきたひとを、私は見上げた。
「何なら二人で抜けようか。」
ホテルへ行こうと誘う腕に、いつまでも助けられてるのもまるで逆らうことのない弱い生き物に感じた。
(……そっか、私、いつも。楽なほうに逃げちゃって。だからいつの間にかビッチだなんて)
甘えていただけなんだと、ようやく気付く。
「大丈夫、です。ちょっとお手洗いに行きたいだけ」
彼の腕をほどいて、まっすぐ化粧室を目指す。まっすぐ、歩きたいのにフラフラとおぼつかない。
またすぐに支えられてしまう。親切な下心。
普段ならちゃんと振り払えるのかもしれないけれど、不用心にお酒を飲んでいた私にはそんな力もないらしく、彼の胸元を押し返すために伸ばしたはずの手を愛しそうに撫でられた。