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あたかも普通の恋愛小説
第3章 にゃんにゃん禁止令


フラフラと、歩く。彼が行ってしまったほうへ。後ろで誰かが何かをいってる、そっちはトイレじゃないとか何とか。ふわふわしてよくわからない。こんなところでバッタリ再会とか、もしかしたら私たち縁があるのかも。この間のお礼を言って名前教えてもらわないと。


カラオケボックスのロビーカウンターの傍の自販機の前に彼の姿を見つけた。

私を追いかけてくるひとがわーわー喋っているからか、彼はすぐ振り返り私に気付く。ホラ、目があった。そらさない。私を見てる。きっと私を覚えてる。


「こおまえあありらとうごらいましあ。あえ?」


すごく呂律がまわらない。彼はくすりと笑ってこう言った。


「酔いすぎ」


さっきまでちゃんと喋ってたつもりなんだけど、もしかしたらそう思ってたのは私だけでずっとベロベロだったのかな。


「おらまえおおしえてくららい」


それともこれは夢で、こんな都合のいい展開は実際にはないのかな。足元が崩れそうになったら彼がすかさず支えてくれる。そしてすごく眠たい。

ため息が聞こえた。

ぼんやりと見上げると彼が少し困った顔をして不機嫌そう。あぁ迷惑かけてる。後ろでさっきのひとがまだ何か言ってるし、よく聞こえないけど迷惑かけてるのはわかる。


「ことり」


名前を呼ばれた気がした。


「彼とホテルいく?それとも俺と帰る?」


ああ、やっぱり夢か。残念。

でも夢でくらいは迷惑かけてもいいかなぁ。私、このひとといたいや。


「かえゆー」


彼にしがみついて私はこどもみたいに甘えた。あとは記憶ない。


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