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あたかも普通の恋愛小説
第6章 駆け引き、誤算、泡沫の恋
不自然なまでにグリグリ押し付けられて、さすがの私も頭に来た。私が前向きに悩んで一生懸命どうにかしようって時に、一体何だっていうの。まるで私なんかただの都合のいい性処理係だといわんばかり。こんなの我慢出来ない。
おとなしそう?気が弱そう?
馬鹿にしないで!
電車が揺れたカーブの時。私は押し付けられていた股間を、思いきり握り締めた。呻き声をあげた後ろの男に周囲の視線が集中する。どんな顔しているか知らないけどこれで少しは懲りたでしょ。
それで私はすっきりして怒りは治まった。
けれど。次の駅について、下車のために動き出した人波。私はまだ先の駅だから流されないよういたのに誰かに押されて出口へ近付いてしまう。急に恐くなった。何か変。
「黙って降りろよ」
低い声がボソリと耳元で聞こえた。さっきの痴漢が、根に持って私に復讐するつもりなの?悪いのはそっちじゃない!
私はポールに掴まって押し出されまいと抵抗をした。ちょっとしのげばすぐに乗車してくる人たちが来る。ほんのちょっと、あとちょっと。
どっと乗り込んで来た人々に感謝したい気分。すぐ後ろで舌打ちが聞こえた。
やだ。後ろにずっといるんだ。