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あたかも普通の恋愛小説
第6章 駆け引き、誤算、泡沫の恋
恥ずかしい。何も答えられない私を見て井藤くんはちょっと声のトーンを落とした。
「さっきの男になにされたの」
「ち…違うんです。もう平気です」
するとちょっと不満そうに口を歪めた井藤くんが真壁さんの見ている前で突然私の胸をサッと撫でた。
「いたぁいっ!」
びっくりして叫んじゃった。実際痛かったし。
「ちょ、…井藤」
辺りの目を気にする常識派の真壁さんと、まったく何も気にしない井藤くん。
「お兄さんが診察してあげます。ちょっと診せてみなさい」
「ええっ?あれ、井藤くんてお医者様志望のひとだっけ…」
「ぜんぜん違うけどね、」
ただのセクハラ!
おどけてる井藤くんと涙目の私に真壁さんがため息をついた。
「でも傷は早めに手当したほうがいいよ、心の傷もね」
どこまで本気かよくわからない軽い調子で井藤くんが笑う。
「そういえわけだから真壁。小鳥ちゃんのおっぱいに軟膏塗って絆創膏貼ってあげてね」
「な、」
絶句した真壁さんと私を残して井藤くんはヒラヒラ手を振りどこかへ行ってしまう。こんな状況でまさかの置き去り。