この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
あたかも普通の恋愛小説
第9章 鳥籠アイアンメイデン
あとは信じるかどうかなわけだけど。私は思い切って信じてみることにした。梨花子が怒りそうだけど。
噂はどうあれ、私が知る限りの井藤くんはそんな悪いひとに思えないし、真壁さんのいう井藤くんも。だから信じてみることにした。
「あっさり信じてくれるんだ?」
自分でも怪しい自覚があるのね、井藤くんは逆にびっくりして私を見る。
「悪い狼が化けてるだけかもしれないよ?」
「ふふ。レンガのお家だから大丈夫」
「?」
意味がわからないという風に井藤くんは首を傾げたけど、内緒。教えてあげない。
「井藤くんって悪い噂があるみたいだけどあれって本当?」
「どんな噂?」
手慣れたハンドルさばきで車を走らせた井藤くんを眺めて、私は窓からの風に髪を押さえた。
「友達の彼女を食べちゃうって」
「――真壁が言ってた?」
「ううん。真壁さんは井藤くんのこといい奴だって言ってた。だから私も信じてみることにした」