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第14章 【夢から醒めるとき】
「…聞いたのか。孝介か?真央か?」

爽介が力なく笑う。
わずかに天を仰ぎ、尚も行為を続けようとした。

『爽介‥お願いだから、止めて。ちゃんと話がしたい』

「話すことなんてない。すべてお前が聞いた通りだ」

―言葉を失った。
膣に爽介の指の感触があった。

『爽介!嫌だってば!』

爽介を押し留めようと、脚を動かした。
蹴っても、殴っても爽介は動じなかった。
心の機微が感じられない暗い瞳で、私と繋がろうとする。

「―どうして俺を拒む?話を聞いて嫌になったか?俺が嫌いか?
だから指輪を置いていったのか‥?」

ちっとも潤いの感じられない秘処に爽介のモノが挿入された。
爽介がガツガツと掘り進む。
痛みだけが走る―

「お前、俺がどんな男か知ろうとしたか?
一度だって俺の《これまで》を尋ねたかよ?
俺がどうやって生きてきたか、本気で知りたがったことはあったか?
訊けば教えてやったよ。
25の時に結婚した。
すぐにガキが出来た。去年、そのガキが死んだ。…ガキが死んだ途端、関係がうまくいかなくなった。
だから離婚した。
一周忌法要に出るために帰った。
これで満足か?」

暴力的な交わりは尚も続いた。
抵抗するのを諦め、声を殺して涙を流す。

「どうして泣く?なんでそんな顔をする?
お前、俺が好きなんじゃねぇのかよ。
いっしょに暮らすって言ったじゃん。
ずっとそばにいるって誓ったじゃん。
お前が嫌がっても、連れて帰る」

『―無理だよ。そのひとと、今も暮らしているんでしょう?』

「別れたんだよ!籍は抜いてる…だから、だから言っただろ…新しく部屋を借りようって。ふたりで部屋を見に行こうって……俺は嘘はついていない」

セックスによる支配を放棄し、爽介が膝を抱えてうずくまった。
ふたりで楽しく過ごしている時にも、しばしば爽介が塞ぎ込んでいたことを思い起こさせる。
確かに爽介は嘘はついていない。
新しく部屋を借りる理由を、私が勝手に勘違いしていただけだ。
ふたりで暮らすには手狭であるからだと―
爽介の自宅には今も元奥さんが住んでいるとは、夢にも思わずに。
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