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第14章 【夢から醒めるとき】
『―4月に再会した時、爽介はまだ結婚していたんだよね‥?』

怪我の療養だとばかり思い込んでいた。
何故、生活基盤であるあの街を離れ、帰郷していたのか。
夏までという長い期間、どうしてこちらで過ごそうとしていたのか。

「―家を出る時、紙は置いてきた。別にお前と再会したから、別れたわけじゃない。
元々どうにもならなかったんだよ‥」

5月。孝介やタカシがバーに爽介を誘わなかったのは、爽介がまだ既婚者だったからか?

「お前の誕生日にプロポーズした時は、俺は独り身だった!
いい加減な気持ちで言ったわけじゃない!」

『だけど―とっても大事なことだよ…』

「俺が結婚していたことが気に入らねぇのか?!ガキがいたことが気に入らねぇのか?!」

『違う!…どうして話してくれなかったの?』

「話し合えば―何か変わったか?俺のガキが死んだ事実は変わらない。
離婚せざるを得なかった状況も変わらない。
お前の気持ちが冷めて、こうなることだけがわかってた。
話そうと思ったよ。
お前が言う、俺への気持ちが本物だと確信出来たなら」

『‥あの街で暮らすことにこだわったのは、そのひとがいるから?』

「カレンは関係ない!」

爽介は叫び、しまったという顔をした。

「‥アイツのことは関係ない。住み慣れた街で、お前と新しい生活が築きたかった…それだけだ」

―私に尽くしてくれた行為は、本当はカレンさんにしてあげたかったことなの?
―こどもを欲しがっていたのは、理由があったの?

尋ねたいことは山ほどある。
だけど……言葉に出来ない。
次の手を一歩でも間違えてしまえば、私たちの関係は砕け散る―
砂上の楼閣だ。

「‥俺は嘘はついてない。お前の気持ちが離れないよう、隠していたかっただけだ」

『―隠せるわけがない。こんな大事なこと…』

「お前を、誰かの替わりにしたことなんてない。アイツとお前のことは全くの別物だ。
…嘘をついたのは、お前の方だろ。
お前、俺を騙したよな?
どうしてあのアパートにずっと住んでたなんて嘘ついたんだよ…どうしてあの街に住んでたことを隠したんだよ。なぁ、みちる。
リョウヘイって一体誰だ?」
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