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Re:again
第14章 【夢から醒めるとき】
冷静に話し合うことなど不可能だった。
これまでお互いに見て見ぬふりをしてきた“膿”が吹き出した瞬間だった。
目隠しをしたまま、私たちは新しい関係を築こうとした。
相手の指先が自分の傷口に触れて痛みを伴ったところで、初めて相手の顔をまともに見つめたのだろう。
壊れてしまうのが怖くて、相手を責めてばかりいる―

爽介には奥さんとこどもがいたこと。
奥さんの名前は“カレンさん”ということ。
一年前にこどもが亡くなったこと。
カレンさんとつい最近、離婚したこと。
爽介の自宅には今もカレンさんが住んでいること―
爽介はこどもの法要のためにヴィラを後にしたこと。

―何も知らなかった。
何も知ろうとしなかったから…爽介と想いを通わせられたことが嬉しくて。
まるで中学生に戻ったような気持ちで、愚かにもはしゃいでしまった。
再会するまでに、お互いが《これまで》どうやって生きてきたのかは見ぬふりをして―
【甘い夢】に溺れていた。

「俺が好きなのは、お前だけなんだよ‥お前への気持ちとアイツへの気持ちはまったくの別物なんだ。信じられないかも知れないけど、俺はただ、みちるといっしょにいたいだけなんだよ。
ただそれだけなんだよ―」

爽介の顔が白くなっていた。

「―なぁ。お前が好きなのは、昔の俺か?今の俺か?
みちるは俺の何が好きだったんだよ?」

*****

夢をみた―

大人の爽介と、昔歩いた小道を歩いていた。

草木は枯れ、野の花は一輪も咲いていなかった。
すっかり小道は荒れ果てててしまった。
小石がごろごろと転がっている。
足場は非常に悪かった。
黒く厚い雨雲が頭上に立ちこめていた。
いつ雨が降りだしてもおかしくない。

数歩先を歩く爽介が、私の腕をついと引いた。
昔のような安心感はなく、爽介はこれからどこへ向かおうとしているのか、私はどこに連れて行かれるのかと不安だった。
夢の中の私は、必死に猜疑心と戦っていた。
爽介を信じたい気持ちと、信じきれない気持ちがない交ぜになり、もがいていた。

―爽介の顔が見たいと思った。
歩みを止め、肩を叩いて振り向かせた爽介は、顔がなかった。
その顔は、目鼻のない《のっぺらぼう》だった。

*****
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