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第14章 【夢から醒めるとき】
*****

小さな物音で目が覚めた。
朝方5時。
昨夜の出来事を鈍い頭で反芻しながら、身体を起こした。
爽介が部屋を出た後、テーブルにうつぶせになったまま眠ってしまっていたらしい。
物音に吸い寄せられ、玄関に向かった。
新聞は取っていない。
5時に郵便物が届くはずはない。
それでも気にかかり、郵便受けを覗く。
茶封筒が投函されていた。
消印はなく、宛名もなかった。
封は開いていた。

部屋に戻り、テーブルの上で中身をあらためる。
茶封筒の中には、厚紙に糊付けされた小さな青い花の押し花が入っていた。
栞くらいの小さな押し花。
中身にも贈り主を告げる文字はなかった。

朝日の中、押し花にじっと見入っていた。

*****

何も考えたくない時は、黙々と身体を動かすに限る。
職場の人々にお土産を配り、いつもと同じように働いた。

マイコや真央が、時々様子を見に来てくれた。
よもやま話で笑う。
帰り際に

「―ちゃんと食べてる?眠ってる?」

そう訊くことを忘れずに。
その度に笑って、頷いた。
泣いていられる内はまだいい。
そして、無理にでも笑える内は大丈夫。

笑みが壊れそうになった時は、押し花を取り出して眺めた。
押し花は毎日、律義に届けられた。
時間はまちまちだけれど、大抵は寝静まる時間や朝方が多かった。
名もなき贈り主の訪れが、私の唯一の楽しみになった。

青、ピンク、黄色、黄緑‥咲いている時は見落としてしまいそうな、野草のような花々。
淡い色合いが美しい。
テーブルに並べて、来る日も来る日も眺めていた。
可憐な野の花に心が慰められた。

必ず毎日届くのだから、爽介と衝突した夜から何日過ぎたのか、数えることが出来た。
その日届いた押し花を見つめながら、
“今日もとりあえず生きた。私はまだ大丈夫。”と自分を励ます。
“布団に入って目を瞑れば、明日になっている。とりあえずその日1日をやり過ごせばいい。明日のことは明日、考えよう。”

思い返せば、この数日に限ったことではない。
そうやって、この5年間やってきた。
私はずっと、“見えないモノ”に護られ続けてきた―
そう認めた瞬間、心がすとんと楽になった。
憑き物が堕ちたような気さえした。

*****
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