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第14章 【夢から醒めるとき】
「‥ホント、弟って損…爽ちゃんは、あれでイイトコロもいっぱいあるんだ。
…爽ちゃんがみーちゃんのことを好きだったのは本当だよ。
僕が保証する」

憂い顔の孝介は、今まで見たどんな顔よりも魅力的だった。
もしも私たちが幼なじみではなくて、今の大人の孝介だけしか知らなければ、私は孝介に恋をしたかも知れない。
“あり得ないこと”を考えるのは好きではないけれども、この広い宇宙のどこかで《孝介に恋をしている私》の世界が存在してもおかしくないと思った。

『ありがとう。孝ちゃん……私、爽介の《これまで》が知りたい』

孝介がハットを被り直し、指を組み合わせた。

「‥ちゃんとわかってる?僕はね、“人助け”は好きじゃない。
偽善者にだけはならないって昔から決めてるんだ。見返りが欲しい」

『わかってる。爽介と向き合うために、《これから》の自分と向き合うために―《過去》が必要なの。
だから、今日はここに来たの』

「‥やっぱり寂しい。僕には入り込む隙間、ないみたい。おいで。場所を移そう」

*****

孝介の車は、まっすぐラブホテルへと向かった。
“どうせなら徹底的にいかがわしい部屋にしよう!”
孝介は紫色でまとめられ、すべての壁が鏡張りになった部屋を選んだ。

『うっわー‥目がチカチカする‥』

天井では大きなミラーボールが光輝いており、小物は金色で統一されていた。
部屋の真ん中にはクイーンサイズほどのベッド。もちろん紫色。
部屋の隅には大きめのベビーベッドと木馬。
オムツや哺乳瓶も置いてある。

『ナニする部屋…?…』

「悪趣味‥冠位十二制かよ。どんだけ紫色好きなんだよ‥」

若干孝介の顔もひきつっている。
変態異常者すらも引く部屋。あっぱれだ!

お互いにため息をつき、顔を見合わせた。

「‥徳を積もうか。みーちゃん。シャワー浴びておいでよ。
夢中になったら、部屋のことなんてすぐにどうでもよくなるよ」

*****
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