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第14章 【夢から醒めるとき】
「これはたぶん、僕しか知らないと思うけど…。
―ユウはね、川で亡くなったんだ。
増水した川にカレンといっしょに流されたんだって。
豪雨に危険を感じてキャンプ場から避難しようとした矢先の出来事だったそうだよ。
鉄砲水が押し寄せて‥そのまま。
カレンは爽ちゃんが助けたけど―
ユウが見つかったのは翌日だった。
…でも、わざわざ亡くなった時期に旅行に行ったでしょ?
僕からすれば、古傷をえぐるような行動だけど。
本当は、みーちゃんとずっといっしょに過ごそうと考えていたはず。
…たくさん考えて、必要だと感じたからユウに会いに行ったんだと思う。
けじめをつけたかったんじゃない?
みーちゃんと暮らしたって、爽ちゃんはユウの父親であることに変わりはないんだから…。
お兄ちゃんなら、そういう風に考える。
そういう男なんだ……」

泳ぎが得意だったのに、水辺に近付かなかった爽介。
本当は行きたくなかったはずなのに…
私が旅行を楽しみにしていたからか、連れて行ってくれた爽介。
どんなことをしても私といっしょに寝ようとした爽介。

―記憶には記憶の上書きが必要だ。

爽介は私と新しい思い出を作ることで、心の整理をつけようとしていたのだろうか?
ひとりで大きなものを抱えて―

「‥今の話は、お兄ちゃんから話すべきことだ。
でも、お兄ちゃんはあんな調子じゃ、一生打ち明けないかもしれないから。
不器用なんだよ。
それに、不安だったんだと思う。
自分の足場が不安定な状態で、みーちゃんに愛してもらえるのかどうか」

―俺のコト、好きか?
―俺の何が好きだったんだ?

爽介の声が心の内側から響いた。

「馬鹿な男でしょ?
だから…嫌いになりきれない」

孝介の指が躊躇いがちに私へと伸ばされた。

「馬鹿なだけで…いい加減な男ではないんだよ。
爽ちゃんのコト、嫌いにならないでやってよ。お願いだから。
もう1回、話しをしてあげて。
強がりの奥に隠された、本当の心を見てやって。
そんな、何もかも決意したような顔をしないで。
まるで僕たちと一生会わないと決めたような顔しないでよ…僕たち、ふにゃふにゃでグズなみーちゃんが好きなんだ…」
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