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第14章 【夢から醒めるとき】
『‥爽介に訊かれたの。私が好きなのは、昔の爽介か今の爽介か…私、答えられなかった』

自分でも呆れてため息が出る。
爽介がどんな気持ちでそう尋ねたかを考えれば、安心させてやるべきだった。

「‥思いもよらない話を聞いて、今は混乱しているだけだよ。
みーちゃんたちは両思いだよ。
もう離れないでよ…」

顔を歪める孝介の頭を撫でる。
“泣けないこども”は今日も涙を流さない。

「―このまま、爽ちゃんの前からいきなり消えるような真似は止めてね。爽ちゃん一途だから、一生みーちゃんのコト待ってるかも知れないから。
いずれにせよ、一区切りつけてやって。
長い長~い僕らの青春に」

『二十歳になると、青春が死ぬって葵が言ってたよ』

孝介がため息をつく。

「青春はね、不死身なんだ。冬眠もするし、一部が死んでも甦る。クラゲみたいに細胞分裂するんだよ。
僕を見てごらんよ。
みーちゃんのことなんか引き摺っていないつもりだったのに、再会した途端、ただの馬鹿野郎だ。
…爽ちゃんが荒れるのはさ、僕も辛いから。爽ちゃんが女を抱くと自動的に僕まで抱かなくちゃいけないんだよ。腰にクルんだよ…」

『‥好きで抱いてるんでしょ?』

「半分は強制。
僕も爽ちゃんも女を試してるんだ。“爽介だけ”って言葉は本物なのか。
悪趣味だなって自分たちでもわかっているんだけど、止められない。
たぶんね、ひとりでも僕に堕ちない女がいれば、こんな馬鹿なことからはさっさと足を洗ったよ。そして爽ちゃんはその女を大事にしたと思うよ」

孝介の言葉にじっと耳を傾ける。
【青春の通過儀礼】をうまく済ませられなかった私。そして爽介。
おそらくは孝介も―
馬鹿な私たちの物語。

「僕もね、いい加減面倒くせぇなってうんざりする時がある。
“もう止めない?女なんて勝手な生き物だよ。諦めな”って爽ちゃんに言うんだ。
でも爽ちゃんは
“みちるはお前に堕ちなかったぞ”ってね。
判断基準がみーちゃんなんだ。可哀想でしょ?
時間が止まってるんだよ。
でもわかる―
みーちゃんはお馬鹿だけど、よそ見をしなかったもんね。
みーちゃんだけが僕らを比較しなかったんだよね。無条件に爽ちゃんのコトを慕っていた。
そんなのって…羨ましいよね」
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