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第14章 【夢から醒めるとき】
孝介が急に私を羽交い締めにした。

「…抱いても良い?
僕たちね、みーちゃんのコトがずっとずっと好きだったんだ。
爽ちゃんには悪いけど…怒らせるだろうけど…こんな状況でもやっぱりみーちゃんが欲しい…」

*****

孝介は、私がくるまっていたシーツを床に落とし、バスローブをそっと剥いだ。

「僕は嘘つきだけど。
みーちゃんを好きだったことだけは本当。
もうこんな気持ちは捨てるけど‥一度だけ…一瞬だけでも自分のモノに出来るなら……」

孝介が触れるだけの唇を落とす。
瞳は狂おしいほどに燃えていた。

「ねぇ…ずっと気になっていたこと、訊いても良い?
―お前、男に乱暴されたことがないか?」

*****

孝介の言葉に、呼吸が止まった。
どんな表情をしているかをどうしても見られたくなくて、顔を背けようとすると孝介の顔が迫った。

「―ごめんね。知らないふりをしてあげるのが優しさなのかも知れないのだけれど。
ずっと、引っかかってた。お前が僕を拒まないこと。
単純に尻が軽いだけかとも思ったけど、探りを入れても男の出入りはないみたいだし…試しに酷い扱いをしてみても、無抵抗だった。
お前みたいな女を、昔見たことがある。
―過去に乱暴された経験がある女」

顔色が青醒めていくのを感じた。
血の気が下がり、徐々に孝介の声が遠く聴こえる―

「過去に“何か”があった女は、大きく分けて2つの行動パターンをとる。
1つは酷く男に怯えるか。
もう1つは病的に従順になるか―
考えたくなかったから、気付かないふりをしてた。出来れば、そのままそのふりを続けようとした。だけど……
僕ね、相当腹立たしい。みちる―」

孝介の一際低い声が、鼓膜を震わせた。

「―誰にヤラれた?
その男……俺が殺してやろうか?」

孝介の目付きがまた、凶暴なものへと変貌した。
言葉を間違えば、孝介は本当に口に出したことを実行してしまいそうだった。
永遠にも感じられる僅かな沈黙の後、私は唇を開いた―

『―違う……《あれ》は、同意の上だった……』

*****
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