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Re:again
第14章 【夢から醒めるとき】
怪我をしているのに、どうやって運びだしたのだろう?
警察のお咎めは大丈夫なのだろうか?

あらゆる疑問と不安が頭をもたげたが、痛み止めの薬が効いた身体では考えがうまくまとまらなかった。
ひたすらとろとろと眠り続けた。

“階段からの転落事故により怪我を負った”ということで有給を取り、涼平もバイトを休んだ。
涼平は黙々と家事をこなした。
元々綺麗好きで掃除だけは欠かさない男だったけれども、事件後は更に掃除に勤しんだ。
放っておけば、何時間も同じ場所を雑巾で拭いていた。
―私がちょうど倒れていた場所を、瞬きも忘れてひたすら清めていた。
少しでも汚れていたらあの事件のヒトコマが再生されるとでもいうように。
“掃除はそれくらいにして、こっちに来て”

私の声でようやく涼平は我に返り、微笑みを浮かべる。
事件後も涼平はずっと笑っていた。
一度も私のことを責めなかった。
それまで以上に優しく接してくれた。

不気味なくらい、変わらない日常―
ところが、私の気付かぬところで…歯車は狂い始めていた。

*****

―夜中に聞こえる物音が、はじめは何の音なのか想像もつかなかった。
比較的静かな場所に建っているとはいえ、都会なのだから騒音に悩まされることはしばしばあった。
奇怪な物音が自分たちの部屋から聴こえるということに、涼平が立てている物音だと思い至った時、肝が冷えた。

ゴツ‥ゴツ…と、何か硬いものをぶつける音だった。
等間隔の物音の間に、念仏のような囁き声が混じっていた。

『‥涼平?』

ようやく開くようになった目蓋を開け、暗闇に目を凝らす。
よく見えなかった。
照明のリモコンをONにした。
言葉を失った。

涼平がバットを握り締め、壁に頭を打ち付けていた。

『何してるの‥どうしたの?』

バットなんて、元々部屋にはない。
私も涼平もスポーツには無縁の人間だ。
最近になって涼平が持ち込んだ、と考えるのが妥当だった。
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