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Re:again
第14章 【夢から醒めるとき】
「‥眠らないようにしようと思って」

私の声など耳に届いていないかと思ったけれど、涼平にはしっかりと聞こえていたらしい。
はっきりとした口調だった。
寝ぼけているわけでもないとわかり、余計に怖くなった。

『どうして?眠ろうよ‥怪我しちゃうよ。
バットなんか置いて、こっちにおいでよ』

涼平はその場を動かなかった。
変わらず頭を壁に打ち付けて、何事かを呟き続けていた。
痛む身体を引き摺り、涼平の脚にすがった。

『ねぇ!涼平、止めて!いっしょに眠ろうよ!』

涼平が動きを止め、首だけこちらに向けた。

「寝ちゃったら、ミチを守れないじゃない」

涼平が無表情で呟いた。
眼が死んでいた。

*****

―ふたりで、死んだように生きた。

身体は生きているけれど、心が壊れてしまった涼平と、元々どこかが壊れていた私。

『《彼》の精神が不安定になったの。
不眠状態が長く続いて……
ひとりに出来なかった。
怪我がある程度癒えても、離れられなくなった。
私は有給も使いきって仕事を辞めざる得なくなった……ずっとふたりで部屋にいた』

生活はすぐに立ち行かなくなった。
蓄えはあったけれど、底を尽きるのは時間の問題だった。
何より、私たちには生きる気力が欠如していた。

『疲れてた……《彼》が痩せ細っていく姿を眺めるのも辛かった。“もうこれまでだな”ってぼんやりと思った。《彼》に言ったの―“私を助けて”“殺して”って―』

時々、涼平が静かに涙を流す様が哀しかった。
唄を忘れたカナリアが、自身の羽根をむしる姿に似ていた。
二度と、涼平のあの無垢な笑顔は還ってこないと痛感した。

その時、わかった。
私はこの男を愛し始めていた、と。
言葉に尽くせない不安や苛立ち、まどろっこしさ、温かい感情は……心が揺り動かされていたからなのだと。
私は確かに、涼平と想いを交わしていた時期があったと。
何もかもが手遅れだった。

―涼平。私を助けて。
殺して……

布団の上に弛緩した身体を投げ出し、懇願した。
それまで膝を抱えて空を見上げていた涼平が、私の横に座った。
泣いていた。

―ごめんね。ミチ、守ってあげられなくて、ごめんね……。

涼平の指が私の首に食い込み―
そして……

*****
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