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Re:again
第14章 【夢から醒めるとき】
恋に恋をしていたのかも知れない。
ボタンを掛け違えて手離してしまった《あの頃》を昇華するための時間だったのかも知れない。
お互いに【現実逃避】の恋だったかも知れない。
‥それでも私はこの夏、爽介に恋をしていた。

『あのね、爽介。
別れと出逢いは繰り返すってマイコが言ってたよ。
生涯で出逢う運命のひとってひとりとは限らないんだって……』

“運命のひとに出逢えるといいね”とは口にしない。
私はそこまで寛大な女ではない。
今はまだ、そこまでは願えない。

「ふうん。イイコト聞いたな。別れと出逢いを繰り返すのか…
それなら俺たちもまた、どこかで巡り逢えるかも知れないな」

意地悪な顔でにやりと笑う爽介。
私は微笑んだまま、何も答えなかった。
爽介がキスを落とした。
色素の薄い瞳に、私が映っていた。

「――必然なら、またどこかで逢おう。
元気でな。
今度俺に堕ちたら…
一生離さない」

もう一度、爽介が唇を寄せる。
瞳を閉じて、唇を受け入れた。

「…置き土産代わりに俺もイイコト教えてやる。“捨てたモノ”と“忘れモノ”は違うんだぜ。
お前が手離したモノはどっちか、よーく考えてみろ」

何のことか聞き返そうとした時には、爽介の身体は離れていた。
速い歩調で立ち去りながら、爽介は振り向いて叫んだ。
私が好きだった笑顔を浮かべながら……。

「さよなら。みちる…ずっと好きだった」

*****

翌日、恥を忍んで店長に退職願いの撤回を申し出た。
どうしたことか、店長は泣いて喜び、経緯はまったくの不明だけれど、時給が¥50アップした。
ひょっとして店長、私のことが好きなんじゃないか…?

“ヤラせないぞ!”
孝介との約束を反芻し、心を強くする。
よし!部屋に帰ったら写経しよう。
《ヤラせない、ヤラせない、目指せ鉄の女》

「斎藤さん‥幸せの色って何色?」

はぁ?知らないよ!

『店長、彼氏と別れてホヤホヤのアラサー女にはちょっと酷じゃないっすかね?
パワハラっすか?逆に私が教えて欲しいっす』

らくだ色ではないよね‥?

「な‥なんか斎藤さんフリーに戻ってから更にパワーアップしてない?」

『明日あたりモヒカンにしてくるっす。
この先、口が臭くなる一方だし怖いモノなんて何もないっす。
店長、私に惚れないで下さいね。火傷するっすよ』
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