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第14章 【夢から醒めるとき】
今月の半ばには入居出来るように手配し、それまでに荷造りや引越しの準備を済ませる予定だ。
早まって家具を捨てなくて良かった。

引越しには孝介と真央が手伝ってくれることになっている。
―予定通り、爽介はあの街へ帰っていった。

「なぁ。別に引越さなくても良いんじゃないか?
俺は夕飯、誰と食えばイイんだ?」

寂しがりやの血を受け継いだのか、真央はずっとごねている。

「しつこい男は嫌われるよ、真央。
みーちゃんの門出を祝ってやんな」

私が自由になったように、孝介もまた憑き物が堕ちたのかも知れない。
自然に笑うようになった。

「‥なんかさ、孝兄たち怪しい。変だ!
デキてんのか?ズルい!爽兄にチクるぞ!」

喚く真央の声に笑いながら、孝介と目配せをした。
確かに、私たちは変わった。
―恋人にはなれないだろうけれど、ずっと遠い先に親友になることは可能かも知れない。
秘密の共有者、共犯者として。

孝介は私がどんなに爽介が好きだったか、一番近くで見ていた。
そして、涼平との過去を知っている。
私は、自惚れのようになってしまうけれども‥孝介が私を好きでいてくれたことを知っている。
歳を重ねたはるか未来に、色んなコトを笑い合って話せる時が来ればいいな、と願う。
例え疎遠になってしまっていても、孝介が注いでくれた優しさを忘れはしないだろう。

*****

早織ちゃんが部屋を訪ねてきた。
仕事と荷造りに追われる中で、ひと恋しいような気がしていたから嬉しかった。
早織ちゃんは黒いトップスに黄色と黒のチェック柄の巻きスカートにロングブーツを合わせている。
すっかり秋なのだと実感した。
躊躇いなく部屋に上げ、彼女の手土産のゼリーをふたりで食す。

「みちるさん―爽介さんといっしょに暮らすんですか?…」

早織ちゃんが積み上げられた段ボールを見て、顔を青くしている。

『ううん‥あれから色々あって‥爽介とは別れたの』

苦笑いしながら、透き通ったゼリーを金色のスプーンで掬う。
きらきらのサイダーゼリー。底に沈められた星形のチョコが可愛い。
スノードームのようだ。
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