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堕ち逝く空
第1章 突然の手紙
 そしてそういう部分も含めて--好き、なのだ。
 明日からなるだけ、一緒にいる時間を増やそうと決意をした彰義。既に自由登校であるなら、自分が卒業課題に取り組んでいる間、こっちの家で母親と一緒に居てもらえば万々歳である。帰りにでもそう伝えようと、とりあえず目の前でぼこぼこにされているキャラのお返しをしなければならない。

「…あ」

 綾香のケイタイに着信メールの表示と一緒に流れた曲は、父親で設定しているものだ。ゲームを中断し、帰宅を告げるものであった。
 それを見て、帰ってから聞きたいことがあるということ。今から家に帰るということを認めて送信した。

「じゃ、送るから」
「隣だけど…」
「あんな気味悪い封書貰った後で、一人で行かせられるかよ! しかもなりたての彼女を…」
「うっ……はい…お願いします…」

 改めて言葉にしてしまうと、この上なく恥ずかしい気持ちなった二人。なんとはなしに手を繋ぎながら、綾香を隣にある家まで送り届けた。

「おやすみ」
「…ん、おやすみ」

 握っている手を外すのが、惜しい気がする。一度少しだけ力を込めると綾香が顔を上げる。そのタイミングを見計らい触れるだけのキスをした。
 
「………へタレでもするときはするんだ…」
「お前、俺のことそんな目で見ていたのか!?」
「…てへっ」
「てへっ、じゃねぇよ…」

 額を押さえて唸る彰義の服裾を摘んで、綾香はとても嬉しそうな幸せに満ちたような--そんな笑顔で彰義を見た。

「これから改める! 大好き!」
「うっ!」

 ぎゅうっと抱きついてきた綾香の匂い。甘い香りに誘われるように、ぎゅっと力を少し強く抱き返した。
 暫くそのままに、体温と鼓動を感じる。これがもしかしたら【幸せ】というのかも知れないと綾香は思う。そのまま時間が止まれば、どれだけ嬉しいことなのだろうと思う。しかしそれ以上の幸せもあるかも知れない。欲張りだけど、それが恋を叶えたばかりであるのなら致し方ないんじゃないかと綾香は思った。




 運命の歯車は、こうしている間も動いていることを忘れて。――
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