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堕ち逝く空
第1章 突然の手紙
しかし賛同する訳ではないが、綾香とてそこまではまだ想像もしていなかっただけで。いづれは彰義の子供を産んで、四苦八苦と育てる自分を想像したことならあった。
 間を想像しなかった訳ではないが、空しくなるので止めていただけだ。

「えーっと…」
「やめてくれ…すでに俺のライフは0だよ…」

 がっくりと両腕を絨毯につき、項垂れてしまっている彰義の服を軽く引っ張る。そのまま軽く唇を頬に触れて離れると、少し赤くなるのを意識しつつ綾香は頑張ってみた。

「すぐにとは言えないけど…その、その…えっと…あの、そのときは……優しく、して…ね?」

 何を言っているのー! 自分っ!!
 って脳裏でツッコミを入れてみたが、彰義はコクコクと首を縦に振っている。もうこの時点で綾香の頭の中には、手紙の存在は綺麗に消えていた。





「じゃ、行ってきます!」

 下から聞こえた声に、綾香も彰義も部屋の扉を開け下に降りる。既に用意も済んで鞄を提げた母を二人で送り出すと、急に空気がもごもごとしている気がした。
 先ほどまでの会話がそれを生み出していた事実を、二人は強く意識していたのだ。だがそういってすぐに行動が起こせるなら、ただの幼馴染を此処まで続けていた筈もなかった。
 少し気まずいような、甘酸っぱいみたいな--感じ。二人はそれを払拭しようという訳でもなかったが、間を持てないと判断したのか。二人で一緒に出来るゲームをして時間を潰すことに決めた。
 さすがに彰義からしても、そんな封書を貰ったばかりの恋人を、一人になる家に帰すのは怖かったせいだ。
 『兄』という存在が、嘘にしても本当だとしても。綾香の素性はほぼ全部相手が把握していると考えるべきだと彰義は思っていた。
 こんなことになるなら、同じ学校に行けば良かったと思う。しかし目指しいる仕事未来で考えると、彰義は工業科のある学校へ行きたかったのだ。普通科ではそれは習うことも出来ないし、少しでも早くそういう技術に触れたかった。

「ん?」
「はぁ…」

 いきなりため息をついた彰義に、きょとんとする綾香。もう既にゲームの世界を楽しんでいるのが分かるだけに、こんなにあれこれと考えている事実に、若干イラッとするものの慣れていることではあるのでため息で押し流しただけだった。
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