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堕ち逝く空
第2章 始まりは静かに…
 朝、机に置かれた封書が一通。………
 存在感を示していたが、結局昨日はテンションが高いまま風呂に入って出てきたら、父親は仕事の都合でまた折り返し会社へと戻ったことを、一枚の紙に書かれていた。
 がっかりはしたが、会社では偉い地位にいる父親だ。こういうことも小さな頃からよくあったので、また顔を合わせた時にでも言おうと手紙を勉強机の上に放置したままだった。

「でも、頭は冷えてしっかり聞きたいこととか考えられる時間が出来るのはいいことだよね…」

 招待状が有効になる前に、父親ときっちり話をすることだけ胸に決めて綾香は机の引き出しに封書をしまった。
 気持ち悪いモノを遠ざけるように。--

 簡単に朝の支度を済まし、顔を洗いトーストと目玉焼き。コンビニで買っていたサラダを机に並べ、最後にカフェオレとヨーグルトを置く。たった一人の朝ごはんをこうして繰り返してきた。
 寂しさを紛らわせるように、毎朝見ているテレビのチャンネルにかえる。ニュースや地域情報、星座占いや血液型占いなどを見ながら、ゆっくりと朝食を終えた。
 朝食で使った食器を流しで洗い、食器乾燥機の中に並べていく。昨今では食器洗浄機なるものが多いらしいが、上泉家ではいまだ旧式の道具を大切に扱っている。もともと外食(おもに隣の家)がメインであるので、そこまでの道具は不必要であった。

「じゃ、行ってきます! 母さん」

 仏壇はこの家に存在しない。どうして置かないか聞いたことは無いが、綾香が既に記憶を留める歳には無かった。
 ただ日当たりの一番いい縁側に通じる小部屋に、母の部屋というものは存在している。そこのベッドの上に母親の写真が沢山飾られていて、その内一枚の額縁入った写真に綾香はそっと手を合わせた。

「後、今日は父ちゃんと話し合えるチャンスをください!」

 そして鞄を持って駅に向かってダッシュする。これはスポーツ系のクラブに入っていた頃からの癖で、汗を掻かない程度に走って身体を温める癖をつけていた為だ。駅に到着するといつものように女子トイレの中で、制汗スプレーを直接身体に吹き付ける。それだけで滲みかけた汗がスッと引いていった。
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