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堕ち逝く空
第3章 調教と書いて「愛」という
『妹が同じ目に遭うかも知れない』と耳元で警告を受けた。ーー朝、言われた通りに香織は同じ電車に乗る為に白線の奥へと立っている。電車がこのまま来なければいいのに。……そう思う気持ちで項垂れた。

《でも…》

妹のことを知られているということは、相手は完全に此方のことを知っているという恐怖。誰かに相談しようにも、香織は内向的な性格の為に友達と言える相手はとても少ない。しかもその相手にそういう相談を出来るものではない。血の気が下がりそうになった。
目の前に到着した電車。昨日と同じ車両、同じ位置に香織は立つ。心音が激しく恐怖を打ち立てている。暫くすると電車が発車すると同時に、思った通りにスカートが捲られた。

「っ…」

ポールに両手で捕まる。相手の自由を許していれば、妹に被害はいかない。香織は痴漢慣れもしていた。
幼く見える顔や身長に似合わずに育つ胸のせいで。高校へ電車通学が始まってから3年の間にあった痴漢の数は、途中で数えるのも止めた。
それまであっていた痴漢は精々、胸やお尻に触れる程度の軽いものであったから。……けれど、昨日の痴漢はそれ以上をしてきた。
怖いという気持ちがあるのだが、触れる指先が思いの外に女性を上手に煽る上に、ーー優しくて丁寧なイメージがあった。
痴漢にそういうことを思うのも、どうかと香織は思ったものの。…今も前戯のように触れる指先は性急さがない。パンツの上からお尻の間を辿る。上から下からとゆっくりと少しずつその距離を増やしていく。

「……っ」

けれどそれで羞恥が消えるわけではない。中指が身体の中心に来ると、足を開くように太ももを手の甲で合図される。男の手が出入りをしやすい分だけ足を開く。『イイコ』というように、お尻を撫でられた。

《……ちらっと見たけど、女性に困っている人には見えない…》

長身で細身でありながら、ガッチリとした肩をして甘いというよりは端正な顔立ちを相手はしている。どうしてこんなことをしているのか、彼女を募集をしたらすぐに手に出来そうに見えるというのが香織の感想だった。

男の手がその間もパンツ越しに往復している。考えないようにしつつ、思考を逸らそうとしても敏感な場所を掠るだけで、容易く現実に戻されてしまう。もう片手が伸びて来ると前からと後ろから両方で触れてきた。
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