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堕ち逝く空
第3章 調教と書いて「愛」という
回ってきた手は迷うことなく、一番敏感な部分に照準が当てられる。後ろから伸びた手が丁度壺の辺りで弧を描く。ビクッと意識もしていないのに、身体が大きく震えてポールに額を寄せた。
人の波に挟まれて表情が露わにならないことだけが、香織にとってありがたいことだ。顔を赤くし、呼吸がゆっくりと確かに乱れていくのを見られない。それぞれがそれぞれの日常を過ごし、誰も香織に気を留めていないことに救われる。パンツがしたたかに濡れているのが分かった。

「ぅ…ふ……っ」

声を殺す。口元を手の甲に押し当てるが、それでも微かな声が漏れてしまう。身体は彼の手を望んでいる。丁寧に丁寧に優しく触れらて。まるで大切な物に扱う繊細な指先の動き。弧を描く度に湿った音は大きくなった。

「っ!」

布越しに触れていた手がひとつ消えたと思った瞬間ーースルリとパンツの中へと右手が入ってきた。
ピクリと身体が先に反応する。指は隙間から入ると開きだした花の形を辿りだす。人差し指と中指の二本が、開き蜜を零し始めた所をぬちゃっと音を立ててゆっくりと沈み込んでいく。蜜壺からはとめど無く溢れだしていた。
交互に動かしながら、2本の指が目指すのは硬く膨らみだした芽。薄皮を捲りより鋭敏になった芽に愛撫を施す。たっぷりと絡んだ蜜が潤滑を加速させた。

「っふ……っう…」

ポールをぎゅっと掴む手に力が入る。声を抑えようとすれば、鼻から漏れる息が荒くなる。ぎゅっと瞳を閉じると、更に感覚を鋭利にした。
的確に強弱を持ち、優しく触れると両足から力が抜けていく。立って居られないほどにガクガクと震えだす肢体を、後ろから支える片腕。驚き、一瞬振り返る香織を行為の熱意とは逆に、冷たくも思えるほどに冷静な瞳が見ていた。
片手で口元を覆いながら、熱量を増して弾ける時を待つ身体が震えだす。音だはこれだけの物音がする中でも耳朶の奥に響くようで恥ずかしい。

「っ、……ぁ…っっ!!」

一気に深紅に染まる視界。震えではなく痙攣へと変化していた。
次の駅に到着するまでの数分の間に、一度熱に浮かされた身体が別の意味で震える。人が乗り降りしている間も、男の腕は香織を拘束していたが。ーー逃げようという気持ちはもう無かった。
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