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第10章 依頼人　高橋　美樹

「迎えに来たってどういうこと？」

瑠璃が無邪気に答える。

「お前高橋と不倫してるだろ」

瑠璃の足が止まる。

「あいつの嫁、誰だか知ってたのか？」

瑠璃は小さく首を縦に動かした。

「最初は知らなかった。

　どこかのお金持ちのお嬢さんだってことは聞いてた。

　...でも最近知ったの。

　あの一族だって...」

瑠璃は項垂れたまま動かない。

「そうか。

　だったら俺が迎えに来た意味もわかるな？」

瑠璃は小さく頷いた。

「とりあえず身の周りのものだけもって
　シェルターにいくぞ」

香川は小声で言うと瑠璃の手を取り地下駐車場へと向かった。

「瑠璃、笑え。

　誰が見てるかわからねぇ」

瑠璃は頷き洋輔に笑顔を向けた。

「そうだ。
　今日は俺とデートだ」

「なんか昔もこんなことあったね」

瑠璃は今ではほとんど思い出すことのなかったあの頃を思い出していた。