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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
自宅が隣にあるのに、今日は佐伯家でお泊まりらしい。
別にそれに異論はないものの、引っかかることがある。
僅かにでも自宅の様子を見に戻ろうとすると、和気藹々としている佐伯家の面々が、ぎくりとしたような妙な緊張感を漂わせて、動きを止めるのだ。
――静流ちゃん、ご両親の仏壇はうちにあるわよ。ちゃんと供養してるし。
――静流ちゃん、そうだおじさんとトランプゲームしよう。
――しーちゃん、お着替えは僕の部屋にあるから心配ないよ? 下着だってきちんとあるし! 僕好みの白いフリフリもあるし!
――シズ。この俺がお前用のお泊まりグッズを買いに行ってやるから、お前はそこから一歩も外に出るな。
勝手にウチから持ち出された荷物があることは、きちんと管理していてくれている佐伯家だから別にいい。そこは問題じゃない。
なぜ、あたしを自宅に帰らせようとしないか、だ。
隣だよ?
佐伯家の玄関出て、数秒が自宅だよ?
――静流ちゃん、ほ、ほらお風呂お入りなさい。ナツ、支度してあげて。
――うん。しーちゃん、僕と同じ香りのシャンプー使ってね。うふふ。
しかもあの面倒くさがりの帝王が、お泊まりグッズなるものをコンビニに買いに本当に行った。あたしのために、買いに行った。
――丁度新装開店したばかりらしいから、見物に。
あたしもついていくと言ったら、全員で止められた。
――お風呂へどうぞ!
なぜだ。なぜなんだ、佐伯家。
中庭は綺麗にしていてくれたけれど、部屋の中が汚くなっているのかな。
別にそれでもいいじゃないか、12年も経っているんだし。
使えるものがあるのなら、佐伯家なら使っていてくれて全然構わないんだし。
あのわざとらしいくらいの警戒は、異様だ。