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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 


「ナツくせぇ……」


 そんなぼやきとともに、苛立ったようにわしゃわしゃと頭を洗い始めた帝王様。

 あたしの目の前にて、どっかり胡座をかいている。出て行こうとする気配はまったくない。いつも通り帝王は、泰然としたいことをやり抜く気だ。


 狭い洗い場、大きいのはハル兄の体格&存在感と、あたしの居る浴槽だけ。

 
 ここから出られないじゃないか!!


 あたしも馬鹿だ。

 ハル兄とぶつかっても、出口に走ればよかったのに、浴槽に入ってしまったら、窓しか逃げられるところはなくなってしまったじゃないか。


 帝王が頭下げてわしゃわしゃしている今、背中を蹴り飛ばしてでも行くか? 行っちまうか?


 いつ行く?

 イマデショ!


 決行とばかりざばぁと浴槽から立ち上がれば、ハル兄がこちらを向いた。


「なんだ? そんなにお前、自分の裸見せたいのか? 見せたいというのなら、じっくり見てやらんこともねぇが……」

「ち、違いますっ!!」


 あたしは慌ててまた浴槽に沈んだ。


 本能で生きるオトコを振り切ることは無理なのだろうか。

 ああ、だけど……このおかしな沈黙が耐えられない。


 いやだよぅ、あたしの一生に一度あるかどうかの痴態を、見たのか見てないのかわからないだけに、墓穴を掘りそうでそれを聞くこともできないだけに、密室ふたりきり……しかも裸で逃げ道ないなんていやだよぅぅぅ。

 安全領域をなんとしてでも確保しなければ!!


 目指すは……帝王様が体の洗浄後に湯浴みではなくシャワーで終わらせる事態か、最悪浴槽に赴いたのなら入れ違いで猛ダッシュ。


 所詮愚民が考えつく方法なんてそんなもの。

 あたしは帝王とのガチ勝負に勝てる自信がない。


 ここは逃げの一手、守りの一手。


 あたしはふぅふぅと息巻いた。

 愚民、千載一遇の好機をひたすら待ち続けるなり。
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