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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 思いきり、逃走のチャンスを逃がしたあたし。


「ぎぇぇぇぇ!! 入ってきたのぉぉぉ!?」


 あたしは壁に追いつめられた獲物のように、情けない声を出す。


「当然だろうが。風呂に入りに来て風呂入らずして、俺に帰れというのか、お前は。あ゛っ!?」


「い、いえいえ。ではどうぞごゆっくり。あたしはあがりま……」

「ほぅ、俺を跨いでいくのか。そこまで見られたいか、お前」


 浴槽から帝王の後ろ側に行くということは、帝王様のお顔に股間を見せつけて上がらねばならない屈辱を耐えねばならない。



「しかたがない。存分に見物してやろう」


 浴槽を贅沢に横使い。縁に両手を伸ばしておくつろぎの帝王。

 余裕めいたその笑みは、甘さを滲ませているように見えた。


 濡れた黒髪は高校時代のハル兄のように、若かりしあどけなさを作るものの、それを掻き上げれば途端に成熟したオトコの艶香を振りまく。

 なんなの、なんなのこのひと。

 水も滴るいい男どころの話ではない。もうこれは、心臓を爆発させる殺人兵器だ。


「どうぞ?」


 にやりとハル兄は笑った。


 足が伸ばせられないその体勢は、窮屈すぎてリラックスなんて出来ないの、ハル兄わかっているんでしょうが!!

 いつものハル兄なら、野生児らしく両手両足伸ばしてバシャバシャしてるんでしょうが!!


 わかっていて、今そこに居座る気か!!

 完全に嫌がらせだ。


 千載一遇のチャンスをしくじったあたしは、最大のピンチを迎えた。


 どうする?


 ここはもう捨てる恥もないのだから、ハル兄を跨いで逃げた方が未来的に絶対いいと本能が叫んでいる。これ以上一緒にいる方が危険だと。


 ならば――。



「……本当に俺様を跨ぐか、お前」


 上げた足を引っ張られて、あたしはすっ転んだ。

 帝王のお胸元に。


「ひょぇぇぇぇぇ!!」


 地球外生物の泣き声を発するあたしを抱き留めながら、ハル兄は不愉快そうに目を細めた。



「……ずいぶんな反応だな、シズ。

俺を思い出して、オナっていたくせに」



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