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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
ああ、誤解してしまいそうになるじゃないか。
あれは、特別な意味があった行為なのだと。
「い、医療行為でしょう! こんなとこナツに見られたら……」
「っ……」
ハル兄の抱擁が、心なしか強くなる。
「ハル兄聞いてる? ナツに誤解されちゃうよ?」
「ナツ……ナツ、ナツ、ナツ…っ!」
ドガッ。
ハル兄が浴槽を拳で叩いたらしい。
「ひっ!?」
びくびくと後ろを見たら、ハル兄は浴槽の縁に頭を乗せて、睨み付けるようにして天井を仰ぎ見ていた。
眉間に皺を寄せ、苦しげというより機嫌が悪そうで。
なにか気を障ることを言っただろうか。
あたしはハル兄に、前に言われたことをなぞっているだけだ。
ナツに誤解させるな。
ナツをキレさせるな。
あれは愛のない医療行為だ。
あたしの言葉のなにが、ハル兄の機嫌を損ねたのだろうか。
しかし怒らせてしまったわりには、ハル兄の腕は離れない。
ますます力がこもった気がする。
「ハル兄、どうしたの……? なにがいけなかった?」
「……俺、寝てねぇんだよ」
それがなんで理由になるのかよくわからない。
「寝てねぇんだから、おかしなこと口走ってるんだよ」
ハル兄の顔に、凄惨な翳りが見えた気がする。
それは憔悴というものにも近く、寝不足特有のものといえばそうとも言えた。
「え、ええと? 眠たいんだね? だったらあたし先にあがるから、ゆっくりお部屋で……」
ここはひとまず退散をしようと立ち上がろうとしたら、ハル兄はそれを許さなかった。さらに体を密着させてきた。
「まだ……いいだろ?」
耳もとで甘えるように囁かれた、少し掠れたハル兄の声。
「寝不足にした責任とれよ」
その艶めいた低い響きに、体がぞくぞくする。
「もう少しここにいろよ……俺の傍に。
もう少し独占させろよ……」
そしてあたしの首筋にハル兄の顔が埋まる。
「なぁ……シズ」
熱い吐息に、思わず身を捩らせた。
「なんで人の家で、俺の名前呼んで……オナるよ……」
「――っ!!」