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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
ガランガランガラン。
そんな時だった。
浴室の外から音が鳴り響いて、あたしの意識は現実に戻ったのは。
「なに、なんの音!?」
快感を打ち消すほどの異質な物音。
ふたりだけだった世界に侵入されたことに対する恐怖が背筋に上る。
「お前か、しーちゃんを付け狙ってた奴はっ!」
ナツの怒声と駆け出す音が聞こえた。
物音をたてたのは、ナツではなく……ナツが追いかけているらしい相手?
「――クソっ、なんで今なんだよっ!!」
思いきり激しいハル兄の舌打ちの音。
咆哮しながら離れゆくハル兄の指を、消化不良のまま怪訝に見つめるあたし。
「波瑠兄、何処にいる!? 波瑠兄――っ!?」
ハル兄は立ち上がり、浴室の窓を開く。
「おう、見つけたのか、ナツ」
「ごめん、お風呂だったの!? ようやく姿見れたけど逃げられた! 逃げる際にコンビニのレシート落としたから、ちょっと聞き込みに行ってくる!」
「ああ、俺も後から行く。シズはお袋に任せるわ」
「ん、じゃあコンビニでっ!」
よくわからないが、なにか起きているらしい。
「シズ……」
帝王様は言った。
「俺様は行かねばならない」
お戯れは中断されたようだ。
「お前にとっては、非常に残念だろう。お前にとっては」
……燻る火を、あたしに残したまま。
そしてハル兄の目にも、同じ火が燻っている。
ハル兄はあたしばかり強調しているが、ハル兄の方が残念そうに見える。
いや、あたしも十分残念だけれど。
なんだか今日は、こんなことばっかりな気がする。
なんで、という気持ちと、やっぱり、という気持ちが半々で、それでもやはり消化不良をもてあますあたしは、わずか口を尖らせた。
そんなあたしに、帝王様は超然と言ったんだ。
「……夜、部屋の鍵…開けとけよ」
……甘やかにも見える挑発的な眼差しで、
「イイ子で俺を待っていたら、たっぷりと褒美をやる。
……いいな?」
今宵……帝王の、夜伽の勧告を。