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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
うっかりして背景になりつつあったおばさんが、声を低めて言った。
「ええ。静流ちゃんが目覚めてから、どうもここ周辺に怪しいひとの気配がするものだから、全員で静流ちゃんの家やその周りを見張り、静流ちゃんの家の部屋の至る処に罠を張ってたの。静流ちゃんも聞こえたでしょう? ガランガランっていう音」
「丁度僕が、見回りにしーちゃんの家の周りを歩いていた時だったんだ。あの音は裏口から入ろうとした音だ。多分、しーちゃんが帰ってきたのを知って、家に侵入しようとしていたんだと思う。落としたレシートは、近くに出来たばかりのコンビニで。担当したのは新人の子でもう帰っちゃったというから、明日でももう一度行って、その特徴とか情報を掴んでくる。
だけどよかったよ、しーちゃん僕の家にいてくれて。下手に恐い思いさせずにすんだもの」
そうナツは悲しげに笑って、あたしの手を握りしめた。
「暫くは家に戻らない方がいい。多分しーちゃんの家、向こうも侵入した経験から間取りとかばっちり把握していると思うから。いつどこに、僕達が気づかなかった場所から、しーちゃん捕らえる罠とか盗聴器とか出てくるかわからないし」
ぞぞぞ。
背筋に寒いモノが駆け上がる。
目覚めた12年後は、なにやら安穏とできない世界になっているようだ。
「大丈夫、僕達がしーちゃん守るからね。だけどしーちゃん自身も気をつけて。怪しい人影見たら、絶対ひとりにならずに僕達を呼ぶこと。いいね?」
あたしはこくりと頷いた。
「ママのものを漁っていたというのなら、ママだったら相手がどんな奴らなのかわかっていたのかなぁ。そんな物騒なこと、今までなかったのに」
平和すぎる家族だった。
淫魔だというママは、どんな過去を送っていたのだろう。
その過去は、おじさんもおばさんも知らなかった。
「アイツも、口が固い奴で……この私にも、付き合っていることすら知らせず、突然身籠もったから籍を入れたとの事後報告だけだったから。私は、付き合う前から紹介していたというのに」
背景になりかけていた叔父さんが浮き出て、苦笑した。
確かに、パパとママのアルバムには……結婚式の写真はない。
できちゃった婚だということを初めて知った。