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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 ただ……ナツは脳天気な変態さんではない。彼は利発だ。

 そんな彼は、最近頓になにか考えることが多くなったような気がする。


 それは、あたしを狙っているだろう人影が、ちらちらと動いているのが、あたしでもわかるようになったからだろうか。

――コンビニの聞き込みは……ちょっと予定外のアクシデントで波瑠兄に任せた。僕は家の中でしーちゃんの専属SP! 蛇の生殺しSP!


 クライアントを体を張って警護する禁欲的なSP職に、勝手に不埒な妄想を抱いていたらしいナツは、なにやら怒っている。


 予定外のアクシデント内容は明らかにされていない。


 ナツを苛む憂い事――。

 なんだかそれだけか理由ではなさそうな気がするんだ。


 それを聞くとナツは決まって、話題をそらすようにして誤魔化すか、鼻を鳴らすようにしてあたしに甘えてくる。……勿論その後はおばさんに、布団叩きで尻を叩かれて引きはがされ、家の見回りに外に出されるけれど。


 まるで嵐の前の、怪しげな雲のような危うい空気をナツが持っているのを、あたしは感じている。

 彼はピリピリとした空気までは、その王子様スマイルや変態さでは隠せていない。


 だけどあたしは、彼の憂う正体をしらない――。



 おかしいと言えば、ハル兄もそうだ。

 むしろナツより酷いかもしれない。


 ふてぶてしく思えるほどにニヒルに整いすぎたその顔は、ここ数日でげっそり憔悴したように思えるのは、気のせいではないだろう。

 
「ああ、あの子……仕事から帰ると寝ずに夜、家を見回りしているの。ナツや私達が代わると言っても聞かないし、おかしいわね、なにか取り憑いているのかしら」

 帝王になにが取り憑くというのか。

 帝王を超える幽霊は、大魔王かなにかだろうか。


 だけどあたしは気づいている。


 ハル兄……。

 時々、女ものの香水の匂いさせて家に帰ってくるよね?

 ハル兄は、そんな匂い……させてなかったよね?
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