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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 ハル兄は女を食い散らかすのが趣味の帝王だ。

 依然女は帝王に群れて平伏し、据え膳をしているはずだ。


 彼女達にハル兄が食指を動かしても、あたしは意見出来る立場ではない。


 ただ……もやもやするだけだ。


 もしも帝王の誘いを断っていなかったら、どうなっていたのかなと。

 医療行為の必要性はないときっぱり言い切っていたハル兄は、最後まですることがなかっただろうけれど、据え膳のあたしは帝王の欲を満たす玩具にはなりえた。

 その上で、やはり彼は他の女を食したのだろうか、と。


 ハル兄からは、あれ以来夜伽の申し出はなく、それどころかハル兄とはあまり顔を合わせていない。一緒にいてもハル兄は疲れた顔をして、すぐに自室に籠ってしまう。


 今までハル兄は、そんな弱ったところをひとに見せたことはない。

 帝王様の貫禄で、そんなものは消し去っていたというのに。


 なんだろう、本当に大魔王に取り憑かれているのだろうか。

 ざわざわと佐伯家の皆様も騒ぎ出している。


 "鬼の霍(かく)乱"、と。


 家族からも鬼扱いされている、さすがは鬼畜。


 よたよたと白衣姿で帰宅したハル兄は、夕食はいらないと言って、ろくに顔をみせずにそのまま自室に向かった。


 そんな時、ナツが言ったんだ。


「しーちゃん、波瑠兄の悩みにのってあげて?」


 悲壮感漂う顔をしながら。


「僕……今日、お外の見張りするから、今日だけは特別、波瑠兄にSP交代って伝えておいて」

「え?」

「多分しーちゃんなら解決出来ると思うよ」


 笑顔なのに泣き出しそうで。


「しーちゃん、僕……大人になることにする。僕、しーちゃんや波瑠兄を困らせる存在にはなりたくないから。だから1回だけ大人になるっ!」


 なにやら1度限定成人宣言をして、未成年のナツは家から出て行った。


 ナツは、ハル兄の異変の理由をなにか知っているのだろうか。


――僕、しーちゃんや波瑠兄を困らせる存在にはなりたくないから。


 それがナツの憂い事と、繋がるのだろうか。


――多分しーちゃんなら解決出来ると思うよ。


 ……あたしが関係しているの?


 だとしたら、あたしがなんとかしなければならない。


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