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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
過去、ハル兄はあたしを騙して、その反応を喜んでいたことがある。
今回もそれかもしれないと一縷の望み抱いてみても、ハル兄は悲しげな目を、くいと横に向けてしまった。
彼の口からは、いつものような憎まれ口は出て来ない。
頽廃的な翳りはより厭世的で、現実世界から消えてなくなってしまいそうなほど、野性的な顔全体に色味もなかった。
心身共に弱っている帝王の姿――。
ハル兄が、末期の悪性がん!!
あたしの両目からぶわりと涙が出てきた。
鼻水もだらだら垂らしながら、あたしはハル兄の上に馬乗りになりながら、白衣を両手でむんずと掴んで揺さぶった。
「なんで!? ハル兄、少し前までは元気だったじゃないっ! ハル兄、決していい行いはしていないし、ひとに迷惑ばかりかけていたけれど、体力と精力は自慢だったじゃないっ! なに突然こんなに弱るのよっ!!」
早すぎる異変。
どうしてあたしはそれらしき兆候を今まで見逃していたのだろう。
「ねぇ、最初から体調悪いの隠してたの!? ナツだけがそれを知ってたの!? どうしてあたしには教えてくれなかったのよ!? あたしが訪問しなければ、あたしに知らせないでひとり勝手に逝こうとしてたの!?」
気づけなかったのはあたしのせい。
それに気づいたナツが悪いわけでも、言わずにいたハル兄が悪いわけでもない。それはわかっている。
近くにいたのに、ハル兄の変調に気づくことがないほど、ハル兄を近くに感じていなかった自分自身に、たまらなく反吐が出るんだ。
「ひどいよ、ハル兄っ!! だから最近、避けるようにして部屋に戻ってたんだね!? フェードアウトなんてらしくないじゃんかっ!!」
誰かに八つ当たりしなければやっていられないほどに。