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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
「シズ……。なんかお前……すげぇ温かいな」
掠れ気味の甘やかな声が響く。
衣擦れのような音がそれに続く。
「お前をこうしてると、落ち着く……」
ハル兄は、その首筋に顔を埋めたままでいるあたしを、下からぎゅっと抱きしめると、彼の首筋に顔を埋めたままのあたしを、腕力でそのままずるずると下に引き下ろした。
そしてあたしの背中と後頭部にそれぞれ手を置くと、逞しい胸にあたしを引き寄せながら、体を横向きにして体を丸めた。
まるで胎児のような格好のハル兄の中に、あたしは包まれている。
「少し……このままにさせてくんねぇ?」
熱っぽい声が、吐息のようにあたしの髪を揺らした。
そして沈黙。
呼吸をすることすら憚れるような、静寂な時間が流れる。
とく、とく、とく……。
少し早めの規則正しい音が、ハル兄の胸から聞こえてくる。
あたしの額に、ハル兄の髪先が掠めてくすぐったい。
「すげぇ……癒やされるわ……」
おかしい。
おかしいよ。
どうしてあたしは、こんなに胸をきゅうきゅうさせているの?
横柄、傲慢、我が儘……いいところは顔と頭のよさとセックスというとんでもないハル兄相手に。
これは本当にハル兄なの?
あたしの聞き間違えだろうか。
どの口が、どんな顔で言っているのだろう。からかわれてるの?
身じろぎをして視線を合わせると、そこには熱に溶けた甘やかな黒い瞳があった。
「……ん? どうした?」
いつもの覇気がないせいか、ハル兄がナツにだぶる。
兄弟だから似ていて当然なのだけれど、とろとろしている顔は違和感がある。
普段のハル兄は、"俺を見ろ"と言わんばかりの、迸るような強さを秘めているひとだから。
自らが周囲を焼き尽くす熱を発することはあれ、その熱に自らを溶けさせるようなひとではないから。
「ハル兄……だよね?」
「当然だろ。変な奴」
黒い瞳は優しげなまま、細められた。
その距離僅か数センチ。
なんでこんなに甘々なの?
ハル兄が弱り切っているから?
お風呂場でもそんな気配あったけれど、その時から弱ってた?
……だけどハル兄の、勃っていたよね?
恋人みたいに、甘々になる意味はなに?
気まぐれなの?