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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
ハル兄の唇は――
「……タイムアウト。見回りの時間だ」
あたしの額に落ち、あたしの唇は……虚しく空を切る。
また……だ。
やはりハル兄は、あたしに唇を重ねるだけのキスもしない。
わかっている。
ハル兄はあたしに恋愛感情はない。
今はただ、ハル兄が弱り切っておかしいのだ。
ふんぞり返っていないハル兄は、不安定で危うい空気を持っているから、キスをしそうな雰囲気になったとあたしが勝手に誤解していたのだろう。
だけど――。
「あたし……唇同士のキスは駄目で、おでこはいいっていう、その違いがわからない。キスはキスじゃない」
悔しいから、食い下がってみる。
「ナツはよくてハル兄が駄目だという理屈も、わからない」
「……そこに愛が介在しているか、だ」
ハル兄が自嘲気味に笑う。
「言ったろう? そういうものはナツに……」
「……ハル兄にとって、ナツはなに?」
上体を起こしてあたしに背を向けたハル兄に、あたしはそのままの横臥の姿勢で問うた。
「……弟だ」
定型句であっても、その前の僅かな間にはなにを考えたのだろう。
「ナツを泣かせるな。……ナツのところに戻れ」
……そう言いながら、どうしてあたしの腕を掴むの、ハル兄。
こちらに見せない顔は、どんな表情をしているの?
「ナツは全力でお前を守ってくれる。……あいつはいいオトコだ。心身でお前を愛してくれる。そのうち、俺には縁遠くなったお前のナカで、お前をイカすことも出来るだろう」
まるで、行くなと言っているように。
「……もしナツという存在が、ハル兄の弟じゃなかったら?」
まるで、兄弟という縛りにもがいているように。
「アカの他人だったら、それでもハル兄は……ナツから愛を貰え、ナツのところに行けっていうの?」
びくんと揺れたハル兄の背中。
あたしの腕を掴んだその手は、するすると力が抜けたように滑り落ちたが、あたしの手を探り当てると……指を絡み合わせてきた。