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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 



「――……ねぇよ」



 指を絡めあった手はハル兄に持ち上げられ……。



「ナツが弟じゃなかったら。

行かさねぇよ。……誰が行かせるかっつーんだ」



 手の甲に、ハル兄の唇の熱さを感じた。



「……痛っ……」



 そして歯を立てて噛みつかれ……



「ナツだから、許してる。だから! 物わかりのいい弟思いの優しい兄でいられるうちに、さっさとナツのところに行やがれ」


 痛みを感じた部分を舌で舐められる。


「ナツは若い。突き抜けた奴だがお前に一途で元気で溌剌としてる。ナツなら、老けた俺が……さらに最悪のEDにもなっちまった俺が、お前にしてやりたくてもどうしてもしてやれねぇこと……お前にするから」


 ねぇ、その物言いなら……。



「……お前の寿命が尽きるまで愛し続け、体でも心でもお前を満足させてやれる」



 それがハル兄の望みのように聞こえるよ。


 弱り切った帝王様は言葉と行動が矛盾に充ち満ちていて、あたしはなにを真実とすればいいのかわからない。

 今までしたいように生きてきたハル兄が、今さら若いだの老けただの、そんな言葉を持ち出すのは……はっきりいって意味不明。

 ハル兄はあたしより年上なんだから老けるのは当然、ナツだって年下なんだから若くて元気なのは、誰が見ても聞いてもわかりきった事象じゃないか。


 そんなことを"理由"に口にするくらい、ハル兄はおかしいから。

 そんなハル兄に、行くなと言われている気がするから。


 たとえ、愛があるキスを必要としないのが、今のあたしとハル兄の関係なのだとしても、それでもあたしはハル兄を見捨てることは出来ない。


 こんな寂しげな背中を見て、放れるはずがないでしょう?


 ここまで、行くなと体で訴えられて、それを振り切ってまでナツのもとに行かねばならない理由はない。


 大体、そのナツからの提案なのだ。


 あたしが今、ハル兄のもとにいるのは。



 だから――。

 ハル兄を置いて行くわけないじゃないか。


 どんなにハル兄が、罵詈雑言であたしを追い出しにかかっても、あたしはハル兄が繋いだ手の方を信じるから。


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