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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
煌びやかな服を纏う人の流れに沿いながら、渡り廊下のような場所を歩いて、別館に移動する。
やけに上機嫌の帝王様は、せっかく艶々のお手入れをして貰った下僕の体に、卑猥な赤い華をたくさんつけようと積極的にお戯れ。
応戦しようとして、スカートの裾を靴で踏んづけ転倒しそうになる下僕。
「ひとつもふたつも同じだろ?」
気怠げな物言いの中にたっぷりと含まれるハル兄の甘やかさが、睦み合いのように思えるあたしは、随分と思考力が淫らさに汚染しつつあるようだ。
「シズ……。お前もつけるか?」
スカーフを持ち上げ、わざと見せつけるその首筋。
流された黒髪の延長にあるように、流麗であり精悍であり、魅惑の鎖骨と繋がる雄々しく艶めいたライン。
どんな気まぐれなのか、下僕の所有の証をそこにとせがむ帝王は、オスの匂いを撒き散らす無防備な部位を惜し気なく晒して、下僕の理性をお試しになる。
ハル兄の言葉で言えば、思わず生唾ごっくんの"そそられる"部分。
喉の奥がひりひりして、なぜかお腹まで鳴る始末。
"おいしそう"
……ひっこめ、もうひとりの"あたし"!
「どうした? 百面相だぞ、お前」
さらに首筋見せつける角度から、誘惑するような艶気たっぷりの流し目まで寄越す帝王。
淫魔すら平気で虜にする、ぶわりと拡がる攻撃的な艶気に噎せ返りそうだ。
「……お前淫魔やめて吸血鬼になるか? 随分と物欲しそうだぞ。ほら、血もやるから、……来いよ」
愉快そうに弧を描く口もと。そんな僅かな所作だけでも帝王のセックスアピールは凄まじく、あたしを魔に堕落させる魔王さまにも兼任なさる。
物欲しそう?
そりゃあ欲しいですとも。
おいしそうで、舐めてかぶりついてむしゃむしゃしたい衝動がありますとも。なんといってもあたしは、絶賛空腹中なんですから。
そんな自他認める欲求とは裏腹に、腰砕けになりそうなへっぴり腰。
艶気の相乗効果攻撃に、体は正直だ。
「据え膳はいりません。大至急スカーフを入れて、艶気の栓をして下さい」
ばたばたと周囲が倒れた音がするのは、巻き添え食った女客だろう。
首でも殺せる帝王、恐るべし。