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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 

 お戯れに翻弄されたあたしは、火照った顔を冷まそうと、片手でパタパタ。

 その横で、帝王様のご機嫌は依然崩れない。

 ハル兄がこんなに嬉々とした表情を顔に出して、衆視の中あたしの体を触りながら歩いているのは本当に珍しい。

 元々ハル兄は、そこまで感情豊かな男ではないし、親しみ込めてボディタッチをしたり、見せたりするタイプでもなく。

 慣れ親しんだあたしやナツ、或いは佐伯一家の場合以外は、ほとんど初対面の人間に不快な思いをさせるほどの無愛想な仏頂面しかしない。しかも平気でガンも飛ばす。


――オトコっていうのは、ナメめられたらおしまいなんだよ。


 初対面からの喧嘩腰の理由は、彼の協調性に著しい難点があることを浮き彫りにさせており、そうした日頃のクール(不機嫌そうとも言う)に徹する理由を、今堂々と返上させるほどに、なにがそんなに嬉しいんだろう。

 おめかししたこと? 非公式のパーティーとやらに行くこと? そんなに社交的な帝王だったのか?


 そう聞いてみれば、途端に笑みを無くした憮然とした顔にて、あたしの頭上にチョップが落とされた。


 違うらしい。


 あたしの髪型が崩れようがいまいが、あたし如きのおめかしなど、帝王様は関係ないらしい。



 ……あたしは嬉しいのにな。

 普段全然見ることが出来ない、いつも以上にすごく格好いいアダルトバージョンのハル兄と一緒に歩けるのは。あたしだけがそれを見ているんだって思ったら、まるで雲の上歩いて居るみたいにふわふわとした心地で、昂奮しちゃうのに。

 おめかしすることで、少しでもそんなに格好いいハル兄と釣り合い取れて、隣に歩いても恥ずかしくないと周りから思われるのなら、それだけであたしの女のレベルが少しでもランクアップしたということで、とてもとても嬉しく思うのに。……所詮は、平凡庶民の憧れだけれど。
 


 そう素直に言ったら、ごくりとなにかを飲み込んだ大きな音がした。


「お前……」


 それだけ言うと、ハル兄が横を向いたまま口をきいてくれなくなった。

 続きを聞こうとハル兄の顔を見ようとしたけれど、ハル兄はまるであたしとあっち向いてホイで遊んでいるかのような絶妙なタイミングで、顔をそらし続けた。


 なんでやねん!

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