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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 

 やがて出てくる通路の終焉、パーティー会場。

 通行手形は"俺様カード"。しかも夕子さんからお借りした二枚だ。


――私は顔パスだからニャン吉連れる時は、カード一枚分でいいけれど、シズルちゃん達は面割れしていないんだから、二枚ないと駄目かもしれない。

 念のためにと機転を利かせて渡されたカードが二枚あったおかげで、なんのトラブルもなく厳重チェックを容易に切り抜けられたあたし達。


 そして行き着いた先は――。


「ほぅ……? カジノか。非公式なのか非合法なのか……」


 初めて目にしたカジノルームとやらが併設された、大広間だった。

 王宮のようなゴージャスな内装の中、あたしでもわかる大きなルーレットがあって鼻息を荒くしてしまった。


「あたしも出来るかな?」

「金、どうすんだ」

「お金……?」

「多分、今夜だけで何百億は動くぞ。この会場に集まった面子、中々各界有名どころが揃ってる。金の出し惜しみはしねぇぞ、きっと」


 あたしの所持金は、おばさまから借りたままの萌えまん代。

 しかもお部屋に置いてきている。


「ハル兄は?」

「財布はあるが、キャッシュで100はねぇぞ? さすがにカードは使えねぇだろうし」

「え。その言い方だと、いつも現金幾らお財布に入ってるの?」

「50~60。悪かったな、貧乏医者で!」


 それは千円札……とかではなさそうだ。

 常時それだけ持ち歩いてなにを買っているんだろう。

 思い当たるのは、タバコ、アルコール、あとはエロ本くらいだ。

 あとは缶珈琲を、病院のコンビニで買ってた気がする。


「珈琲……」


 ふと、思い出した。


「ハル兄……あの、昨日あたし淹れた珈琲なんだけど……」

「ああ、あの濃い目の珈琲を飲んだおかげで、目も冴えて疲れ知らずだ。お前のハジメテ、うまかったぞ」


 きゅん。

 胸が鳴った。



 ……優しいなぁ、ハル兄は。

 そこ笑顔で言うところじゃないはずだよ。

 だってあれ、人間の飲むものじゃないよ、多分。


 く~。

 なんで好感度アップさせちゃうかな、鬼畜帝王のくせに。

 もっともっといつものように、人のを見下したように威張り腐ってくれればいいのに。

 あたしの調子が狂わされるよ……。



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