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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
パーティーといっても司会が進行するわけでもイベントが開催されるのでもなく、各自好きに談話メインで、時折食事をとったりカジノに興じて、親密度を上げましょう……といった雰囲気の会場だ。
「ちっ……。初っ端から、めんどくさい顔の奴と目が合ったな」
突然舌打ちしたハル兄に、近づいて来たのは胴長短足にしか見えない、タキシード姿の小太りおじぃさん。
「おお、佐伯くんじゃないか!! こんなところで会えるとは。いやいや君とは学会であったきりだったが、例の免疫学の研究はすすんでいるかい? 僕、僕はね……」
えらく早口の甲高い声音は、会場で十分に目立つ。目立てば野次馬、或いはご相伴に与ろうと人が集まる集まる。コネこそが上流階級のなせる技とでもいうように。
ハル兄と喋っている人が有名なのか、ハル兄自身が求められているのかはあたしには不明だけれど、さすがのハル兄も早口おじぃさんに拒絶姿勢を取る間もないらしい。ハル兄はひと言も喋っていないのに、おじぃさんの一方的な話術は留まりを知らない。
有無を言わさずまくしたてるあたり、委員長を思い出してしまった。
ハル兄がキレることがないことを願いつつも、それでもハル兄なりに顰めっ面で愛想をしてい(るように見え)るのは、医学界の関係者なんだろう。
5分、10分――。
待てども埒があかず、空腹のあたしはついついいい匂いがする料理にふらふらと足を進めてしまった。
立食式のパーティーらしく、好きなだけ好きなものを食べていいらしい。
出ているすべての食材が超豪華。
松阪牛の分厚い霜降りステーキも、シェフが目の前の鉄板で焼いてくれるらしい。
キャビア、トリュフ、フォアグラを初めて、生の山盛りで見たあたし。
やばい、これ写メ撮りたかった。
あたしは小さく鼻打ちを歌いながら、ハル兄の分も盆に皿を乗せてあれこれ山盛りにしてしまう。
食事をしようとする人達が少ないのは、パーティーが始まったばかりで、挨拶回りに忙しいからだろう。今のうちによそえるだけよそおう。
庶民根性丸出しで、とりあえず高級そうに見えるものから皿に盛ったはいいけれど、ハル兄が今度は違う相手に捕まっていた。そして次々に女が寄ってきて、あっという間に見えなくなった。