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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「………」


 あたしは今、放置プレイを食らわされているらしい。



 いいもん。先に食べてやる。

 一口サイズにしたジューシーなお肉をカプリ。


「ん~おいちぃ~」


 甘さは感じなくなった体だけれど、旨味はちゃんと感じてよかった。

 生きててよかったと感じるこの瞬間。

 がっついて食べすぎて咽せてしまい、胸をどんどんしていると、すっと飲み物が差し出された。


「!!!!!」


 目を見開いてますます咽せたのは、差し出したボーイが――、


「こんなセレブの中で恥ずかしい。だから馬鹿丸出し女は嫌なんですよ、空気が読めなくて」


 ユリの弟、クソメガネだったからだ。

 とりあえず文句を言い返す前に、差し出されたウーロン茶を飲んで一息ついたあたしは、クソメガネに言った。


「なんでアンタこんなとこにいるの!? ストーカー!?」


 どこぞで聞いたような台詞を口にすると、クソメガネはレンズの奥の切れ長の目を、心底嫌そうに細めた。

 本当の本当に嫌そうだ。


「俺にも、選ぶ自由はあっていいはずですがね」


 カッチーン。


「俺はバイトですよ、バイト。ナツと同じく苦学生ですから、バイトしているんです。働かずとも金や食事や住居を差し出して貰って当たり前だと考えている、ナニサマだお前と怒鳴り飛ばしたくなるどこぞのぐぅたらアラサーとは違うので」


 カッチーン。


「本当にアンタ口悪いわね。しっしっ!!」

「おや、30直前まで無駄に生きているだけの価値を見せつけるくらいの、高尚な反撃は無いんですか? ああ、そのつるつるの脳みその貧困すぎるボキャブラリーでは、この19歳如きには太刀打ちできないと観念しましたか。そこは賢明な判断だと褒めて差し上げます」


 わざとらしく、にっこり笑いやがった。

 無駄に顔がいいだけに、その微笑みはぞくりとするほど綺麗で完璧だ。

 これは絶対、女はこの作りきった表の顔に騙される。

 だけどあたしは騙されないぞ!!
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