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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「きゃあああ、ごめんなさい。ごめんなさい!!」

 夕子さんが用意してくれたセカンドバックの中にあるハンカチで拭けども、染みは拡がるばかり。やがて男は言った。


「これ、世界で一品しかない、高価なものなんだよね」


 にやにやと、好色そうな笑みで。


「すみません、弁償しますから!!」

「じゃあ3000万、今すぐ弁償して?」

「さ、3000万!? そんなスーツは、さすがにぼったくりじゃ……」

「出るところに出てもいいんだよ? 裁判所って、結構権力に弱い場所みたいだから、どんな判決下されるかわからないけどね」


 賄賂で裁判官を買収しようとするか、お前!!

 憤りを感じても、無力なあたしには抵抗する術は無く。


 どうする、どうしよう!!



「シズ。なにしてんだ、そのオトコと」


 そんな中、帝王様がご帰還なさった。

 ひどく不機嫌そうな面持ちで。 



「いや、彼女が3000万のスーツにワインかけてさ」

「あたしがかけたわけじゃないんだけれど」

「値段を呈示したらぼったくりとか言いがかりつけてさ」

「3000万のスーツなんて存在すると思う?」


 男の言い分とあたしの言い分。

 ハル兄は眉間に皺を寄せてそれを聞き、そして言った。


「シズ。お前の不注意ならば、金は支払わないといけねぇ」

「ええ!? だけど」

「提供するものがねぇなら、お前きっと体を請求されるぞ?」

「ま、まさか~」

「へ~、よくわかるね。3000万チャラにして欲しいなら、彼女をひと晩好きにさせて貰おうと思ってたんだ」

「はああああ!?」


 ハル兄は、男に不遜に言った。

 その威圧感に、男は汗を掻きながら一歩退く。


「だったら逆に。3000万を払えば、この話はチャラになるんだな」

「そ、そういうことだけど……キャッシュじゃないと受け取らないよ」


 ハル兄の目がギンと険しくなる。


 そんな大金、あるわけない。

 どうしよう、どうしよう……。


「シズ、カジノを使うぞ」

「へ?」

「カジノで3000万、稼いでやる」

「ハル兄!? そんな簡単に言うけど、3000万は……」



「つべこべ言うな。俺様はやると言ったら、やるんだ。


――誰が、お前を他のオトコに抱かせるかよ」


 帝王様は不敵に笑った。




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