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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
さすがにそれを聞き留めたハル兄の顔が険しくなるものの、あたしの肩に手を置き、にっと笑う。
「俺が勝てば、お前からの褒美を貰うぞ」
「ほ、褒美?」
するとハル兄がふっと真顔になり、その顔を傾げて唇を重ねてくる。
「!?」
ひぃぃぃぃ。
このひと、突然なにをしでかすの!
心臓がもたないじゃないか!
ざわめく中、ハル兄は艶然と言い放つ。
「勝利の女神から祝福のキスを貰えば……負けるわけねぇ。その女神様から特別な褒美を貰えるとなれば、同じ勝負でも張り合いが違うだろう?」
「め、女神?」
「当然。この宇宙の中で、俺様の財布を空にさせたばかりではなく、この俺を無謀な戦いに駆り出させる女なんて、女神くらいだろ」
帝王を動かす範疇は宇宙規模らしい。そこにあたしが名を連ねるのは、あまりにも本当の女神様に失礼だ。
「どんなリスク負っても、絶対勝ち取りたいと思わせる……、そこまでの魅力を知らずに誰よりも男の心を弄ぶ……、そんな残酷な女神様だけどな」
「へ?」
「ただの独り言」
ぼったくり男が、気圧されたような顔で虚勢を張る。
「貧乏くさいオトコだ。そんな所持で3000万!? ははは。同情を禁じ得ないから、好きなゲームを選ばせてやるよ」
ぼったくり男にしては、50万はちっぽけな類いらしい。
こいつ、庶民の敵決定。
「シズ。お前ルーレットしたいって言ってたよな。してみろよ」
「は?」
「赤か黒、数字、偶数……いろんな方法がある。好きなのをしてみ?」
子供をあやすかのような優しい物言いだけれど、今は遊びの時じゃない。
あたしの貞操の危機なんてもうどうでもいいんだ。
負けたらハル兄のプライドと金が絞りとられる。無論、働いて返すつもりではあるけれど、負けて悔しがるハル兄の姿を見たくはない。
「お前、俺を信じてねぇよな」
面白くなさそうに言い放ち、突然あたしの首筋を舌で舐めてくる。
「んっ……!?」
「……お前はそういう顔をして、俺に溺れていればいい。それが俺の力になる」
卑猥な帝王様は、その肉厚な舌で己の唇をも舐めながら、超然とした眼差しであたしを見た後、あたしの肩を抱いてルーレット台に連れた。
後からぞろぞろと野次馬とぼったくり男がついてくる。