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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
だが黒マジックも次第にその効力が薄まっていく。
黒だけが出る確率が落ちてしまった。
当然と言えば当然かもしれない。
黒が出過ぎていただけのこと。
だから、黒に10万ずつ賭け続けるあたし達は、負けるごとに10万ずつ失う羽目になる。
負ければ次に勝ち、勝つから続ければ次は負け。
ルーレットに翻弄され、あたしの顔は赤くなったり青くなったり。
意固地になるあたしが、再び10万チップを賭けようとした時だった。
あたしの手の上にハル兄の手が重なり、耳もとで囁かれる。
「毟り取ろうと正体現わしてきやがったぞ。だがそれを狙っていたのはこっちの方。畳みかけられる前に、こっちも仕掛けるぞ」
なにやらおかしなことと不穏なことを言い捨てたハル兄のその双眸は、冷え込んだ鋭さを強めている。
「シズ、今からは1度に100万チップだ。俺がいいというまで、それはひたすら黒に賭け続けろ」
「え!? はずれたらすぐになくなっちゃうよ? それより、これからも黒オンリーっていう奇跡は起きないかもしれないし、次くらいは赤を」
「この浮気者が!! 黒を本命に決めたなら黒だけを一途に愛せ!!」
台の下にある、脛を蹴られた。
あたし別に黒フェチじゃないし、黒にこだわり続けているのはハル兄なんだけど。
そして1回目。
100万のチップで黒に賭け、祈る。
カラン。
「ハル兄、赤だった!!」
そして2回目。
またもやハル兄の指示で100万のチップを黒に賭け、必死に祈る。
「ハル兄、また赤だった!!」
山が……。
あの山が……!!
もう100万のチップはなく、持ちチップは一番最初と同じくらい……即ち今、50万くらい。
もうこれは、また地道に10万ずつ稼いでいくしかない。
だけど黒が出続ける奇跡は、もうない予感がする。
赤黒当る確率は、二分の一。
二者択一の選択が、命運を決めていく。
どうする、ねぇハル兄どうするの!?
ディーラーが賭けの開始を知らせるベルをひとつ鳴らす。
「や、やめる? 違うところ行く?」
「………」
ハル兄は少し考え、首を横に振る。
「シズ。全財産、黒」
そう言ったんだ。