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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 

 対照的に、終始にこにこしているのがアダルトナツ。

 このひとも表情が読み取れず、いいカードが来たのか来ていないのか、その顔からはわからない。

 このひとには絶対勝たせてはいけない舞台裏、じっと見ていたその視線が強かったのか、ナツ如きはあたしを見ると、まるで花の蕾から今まさに花弁が開くかのように、ふわりと、見事に美しい微笑みを見せた。

 どきん。

 心の動揺が体に伝わり、不可解な疼きを感じる。

 まるで欲情したかのような。


 僅かに焦るあたしに、帝王様からギロリとした視線が寄越された。

 あたしの変化をわかっていてなのだろうか。

 至極、ご立腹のようだ。


 タバコを指に挟み、その肉厚な唇が緩やかに動く。



 "あ・と・で・お・し・お・き"


 はぃぃぃぃぃぃっ!?


 お仕置きとはなんですか、ねぇ!!


 涙目で見たハル兄は、咥えタバコでカードをすべて交換していた。


 ……すべてですと!?


「随分と大胆だね、佐伯さん。そこまで生まれ変わりたいのですか?」


 アダルトナツは、口もとで微笑みながら1枚だけカードを交換した。


「俺は運が強いんでな。なにせ勝利の女神がついている」


 ぼったくりは、青い顔をして3枚カードを変えた。

 そしてそのカードを持ったぼったくり、今度は顔を紅潮させ、目がきらきら。わかりやすいったらありゃしない。

 いい役を引き当てたな、これは。


 対するふたりは、交換でいいカードが揃ったのかどうかわからない。


 依然ハル兄は不機嫌そうだし、アダルトナツはにこにこしている。


 ハル兄とナツなら本当に仲良し兄弟なのに、アダルトナツが相手なら、なんでこんなにぴりぴりとした緊張感が生まれるのだろう。

 この空気は迎合ではなく、単なる反発だ。

 
 ハル兄が出したチップは手堅く10万分。

 ……10万が最早手堅いと思えるほどに、あたしの頭はギャンブルに汚染されている。


「コール」


 アダルトナツがそれに倣い、ぼったくりもそれに続く。

 しばらくコールが続き、10万円分が都度回収される。


「ねぇ、佐伯さん。淫魔を抱いた後、心身おかしくないですか?」


 不機嫌さを崩さなかったハル兄が、眉を上げた。

 淫魔って……なんでそんなこと知ってるの⁉︎




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