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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
「もっともっと、欲しくて仕方が無くないですか? 眠れないほど、また抱きたくて抱きたくてたまらなくなる……。もう他の女など見向きも出来ないほど。……レイズ」
突如アダルトナツが、掛け金をつり上げ20万となる。
ぼったくりも目をランランとさせて鼻息荒く、レイズ宣言。一番表情豊かでわかりやすいぼったくりのこの自信満々ぶりは、かなりいい役を揃えたのだろう。
「なんのことやら。淫魔など馬鹿げた存在を信じている時点で、おかしいぞ思考が。女癖は悪いが腕のいい精神科医を紹介してやろうか? ……レイズ」
ハル兄がなにも動じていないというように、鼻で笑いながら掛け金を上げた。
「惚けるおつもりか。淫魔が及ぼす影響が、『妖夢奇譚』と呼ばれる赤い綴り冊子に書かれてあること御存知で? レイズ」
「レイズ! おいお前達、なにわからないこと喋ってんだ?」
「幻想小説は趣味じゃねぇんだ。レイズ」
「歴代淫魔の随想集ですよ、淫魔の秘密が書かれ、それを狙う輩もいますが、その本は今行方不明とか。レイズ」
「だからなに話してるんだよ、レイズ」
みるみるうちに減る、三人のチップの山。
仏頂面のハル兄と微笑んでばかりいるアダルトナツ、そして意気揚々としているぼったくり。互いにレイズを応酬し合い、場はざわめいた。
アダルトナツは、なんで淫魔に通じているのだろう。
それでも依然警戒心がわかずに、逆に秘密を隠さずともいいという妙な解放感と親近感を持ってしまうあたし。
ハル兄を挑発して、ドロップさせるか手札の強弱を見極めようとしているとしても、作り事を喋っているようには思えなかった。
一体、なにものなんだろう。
やがて三人の声は、レイズの単語しか発さなくなった。
世間話を通して相手を見極めていた状況は去ったのだろうが、いまだレイズを即座に宣言できるふたりの手札に、ハル兄は勝てるだけの強い札を持ち合わせているのだろうか。
5枚すべて取り替えて、いい札がくるなんてありえない。
ハル兄のレイズははったりで、他ふたりのドロップを誘っている。
負けたくないという帝王のプライドで、相手が気圧されて降伏するのを待っている。勝てる自信があるのなら、もう少し緩和された物腰になってもいいはずだ。ハメ兄は余裕がないように見えるんだ。